猫Ａ (2001/09/18)
| 拙宅の敷地内に猫Ａという野良猫がしばしば立ち寄る。猫Ａというからには猫Ｂもいる。が、猫Ａはよく見かけるのに比べ、猫Ｂはカミさんですら１度か２度しか見たことがない。両方とも娘がつけた名前である。 私が２階の部屋から外を眺めていると、猫Ａが拙宅の敷地を通って隣家のエアコンの機械の上に寝転がる姿をよく見かける。晴れた日は日向ぼっこをしているようだ。 家に棲みついたチーコと比べると、猫Ａはあまり格好がよろしくない。チーコが頭が小さく手足が長く見えるのに比べ、猫Ａは顔がでかく手足が短い。毛が整っていないせいか、膨らんでずんぐりしているように見える。どことなくタヌキを連想させる。色は縞のような濃い灰色である。 猫Ａが拙宅の敷地内で見かけるようになってから１年以上経つとカミさんが言う。チーコは現れてすぐに娘やカミさんにくっついて来たのに対し、猫Ａは人間を警戒して近づかない。昨年、カミさんがお椀に牛乳を入れて置いておいたけれど、飲まなかったという。 その猫Ａと多少の縁ができたのは９月１０日に台風１５号が近づいたときである。 敷地内に屋根だけの簡易の駐車場がある。その車の下で猫Ａが雨宿りしていた。カミさんからは、Ａは餌を食べるかどうか分からないと聞いていた。が、雨で難儀しているようなのでチーコの固形の食糧を新聞紙の切れ端に包んで車の下に置いてみた。私が近づくと逃げるけれども、食糧はよく食べた。夜にも食糧をあげた。 台風が近づき、風雨が強くなった。駐車場にいるから直接は雨には当たらないだろうけれど、風が強くなるので風雨が車の下に吹き込むことが心配になって来た。駐車場の下はコンクリートで、いくぶん傾斜があるので雨水は道路側に流れる。だから水が溜まることはない。しかしこれだけ雨が降れば水浸しになることが、私には心配になった。 風呂場にあるバスマットを車の下に敷いてやれば水には濡れないだろうと考えた。娘２人が賛成したので、バスマットの移動を実行に移した。後で遠くから眺めると猫Ａはちゃっかりバスマットの上に座っている。 猫Ａはずっと車の下にいるのだろうと思いながらその日は寝た。 次の日、台風は関東地方に上陸した。雨はもちろん風も強くなった。朝、また餌をあげに行くと猫Ａはやはり車の下に留まっていた。風がいよいよ強くなる。風雨が横から来るので、上に車があっても風雨に直接さらされることが心配になって来た。いちばん簡単なのは、猫Ａがプレハブの物置の中に入ってくれることである。物置の中なら、少しドアを開けていても風雨はしのげる。しかし猫Ａを物置まで移動させる術がない。仕方なく車の周囲に障害物を置いて直接風雨が車の下に入らないようにした。 台風は１４時頃をピークに茨城県方向に抜けていった。台風が過ぎたといってもその日はまだ曇り空で、小雨が続いていた。猫Ａは多少動いたかも知れないけれど、やはり車の下で佇んでいる。 その日の夕方頃、買い物に行ったついでに私は猫の固形食糧の袋を買って来た。チーコの食糧を取ろうとするとチーコがこちらを気にしながら眺める。私の食糧をとるなという顔をしているように感じる。そこで猫Ａ用の食糧を別に買っておこうと考えた。 日に２、３度、家の誰かが猫Ａに食糧を与える日が少し続いた。（後日に続く） |
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