男の意地 (2002/06/19)
| ０時頃に外で猫の鳴き声がした。喧嘩である。庭で猫の喧嘩があるのは稀ではない。たぶん、オスの猫Ｂと別のオス猫との喧嘩である。そのまま放っておいてもよいが、猫が怪我をするもの可哀想であるから、喧嘩を止めさせようと思って私は外に出た。普段は私の姿を見ると猫は逃げる。追い払うことが本意ではないけれど、怪我をさせるよりは親切だろうと考えた。 猫Ｂとは白地に赤茶の、体格の良い野良猫である。コロコロしていて愛嬌がある。猫Ｂはメスの猫Ａと仲が良い。冬の間はＡの先導で一緒に餌を食べに来ていたこともあった。Ａは私がいても逃げない。が、Ｂは私を見ると、逃げる必要もないのにすぐに逃げ去る。物陰に隠れてなおも餌のある方向を見ているのが可愛い。 猫の声は隣のＴさんの家との間の塀の近くから聞こえる。私が近づけば猫は気が着くはずなのに、喧嘩の鳴き声は止まなかった。夜ふかししている娘に懐中電灯を持って来てもらい、ライトを当ててみた。鳴き声は止んだ。見ると猫Ｂが塀の上で背伸びする格好をしている。敵に対するときの威嚇の姿勢である。私は見逃したが、近くには猫Ａもいた、と娘がいう。普段ならすぐに逃げ去るＢではあるが、このときは逃げずに戦う姿勢を持続している。別のオス猫はその場から逃げ去っているようだった。 Ｂは逃げなかった。メスの前で男の意地を通したのである。 以前にも同じことがあった。冬の間には、よく猫Ｃ（命名は下の娘である）がやって来ていた。やはりオスである。ＣはＢよりもでかい。どう見ても強い。このＢとＣの間でよく喧嘩がおこった。普通に戦えばＣが勝ちそうである。冬のあるとき、やはり塀の同じ場所で、Ｃと、Ａと一緒のＢとがにらみ合った。危なそうなので私が近づいて分けたけれど、そのときもやはりＢは無理をして逃げなかった。 猫たちが去った後、褒美をやることもできないので、猫温室にいつもより多めに煮干を置いておいた。 |
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