梅雨猫 (2003/07/18)

　今年は梅雨が長い。どうせ気象庁が梅雨入りを宣言したらすぐに天気が良くなるだろう、とタカをくくっていた。が、今年はしっかりした梅雨である。このところやや寒い日が多く、私も断続的に、いくぶん風邪をひいている。
　このしつこい梅雨空が始まる直前は、しばし、暑い日が続いていた。その暑い日に家猫のチーコはよく外に出かけた。といってもあまり遠くには行かず、近くでトカゲを捕まえる日々だった。１日に何度かトカゲをくわえて家に戻ってきて家人を悩ませた。
　今の梅雨空が猫たちにとって有難いのかどうかは分からない。暑い日になれば猫は涼を得られる場所に行ってじっとしている。特に外猫は体力を消耗するだろうと想像する。そう考えるとこの梅雨空は一瞬の恵みなのかも知れない。

　今の時期、我が家の敷地内でよく見かける猫は、チーコ以外は次の３匹である。まず向いのＫさんの家のオス猫の銀ちゃんこと銀次郎。銀ちゃんは身体が大きい、白と黒の猫である。周囲では誰も銀ちゃんには敵わない。銀ちゃんが我が家の敷地内の高いところ、例えば車の上でしゃがんで周囲をにらんでいると他の猫は近寄れないようである。うちのチーコだけは「ここは自分の領分」意識があるので、銀ちゃんと対峙するけれど、銀ちゃんには相手にもされない。銀ちゃんがいるとまずいのは、Ａも敷地内に近寄れないことである。いつかはＡが、銀ちゃんに追いかけられて逃げていた。

　私自身が我が家に来ることを正当に認めているのはＡである。Ａは冬に怪我をして今も少し足が悪いようだけれど、暖かいせいか、見た目には元気になった。平均して１日に１度か２度は現れる。私が見かければ追加で食糧をあげる。自分は餌がもらえるものだと了解しているようであり、猫温室の窓からキョトンとした顔をして私の方をよく眺めている。ただしこのところ、食べるとすぐにいなくなり、敷地内に長く留まることはない。

　もう一匹は茶と白のオス猫、我が家で言う赤白猫である。家人は単に赤白猫ではなく「顔の悪い赤白猫」という。この猫は我が家では一番歓迎されていない。たぶん顔が悪いからである。顔を何処で判断するのかは私にもよく分からない。あえて言えば確かに、オヤジ臭そうな顔をしている。しゃがんだときの顔がいかにも、眉間にしわを立てた陰気そうなオヤジのような趣がある。赤白猫はよくＡと一緒に温室の中にいる。Ａに食糧をやろうとするとＡが最初は食べるけれど、途中から赤白猫が割って入って食べてしまう。一度Ａと一緒にいる赤白猫を追い立てたけれど、Ａも一緒に温室から退避してしまった。見方によってはＡは赤白猫にも恩恵に預からせようとしているように見える。実際は、単にＡにつけこんで食糧を狙っているだけかも知れない。が、この猫も生きているのであるから、あえて追い出すのは忍びない。

　このところタヌキ猫を見なくなった。近所の人はその猫を「トラ猫」といっている。最近そのトラ猫を見ないので「駆除されたのではないか？」と近所の人が噂していたという。先日の夜、温室の中を見るとＡがいた。食糧をやろうと思ったら、その鳴き声から、Ａではなくタヌキ猫であることが分かった。身体の大きいタヌキ猫用に少し多めに食糧をあげた。元気そうだった。

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