Ａと赤白 (2003/09/29)

　朝、家のドアを開けるとよくＡがいる。Ａとは我が家常連のメスの野良猫である。今まではドアから離れた猫温室にいて、私が出てくるとよく顔を見せていた。が、この頃は直接ドアのところまでやって来る。食糧を催促しているように見える。私は当然のようにＡに食糧をあげる。
　ただ、最近は困ったことに、Ａには赤白猫がついて来る。赤白猫とは丸い顔をして身体が大きめの、茶に白が混じったオスの野良猫である。以前はこの猫を敷地から追い出していたけれど、毎日のように来て敷地内で平和そうに寝ているので、追い出すのが不憫になった。困ったのは食糧をＡにあげようとすると割り込んでくることである。赤白を追い出そうとすると一緒にＡも逃げるので追い出せなくなった。仕方無しに皿を２つ用意し、Ａと赤白に同時にあげることにしている。しかし赤白は食べ終わると、いや、食べ終わらなくてもＡの皿に割り込んで来る。Ａの方は遠慮してしまう。Ａは実は気性の荒いネス猫であるが、体力がないせいか徹底的に他猫と争わない。こうなるとＡが可愛そうに思うけれど、実は赤白の方がはるかに身体が大きいから、食糧も多く必要とするのかも知れない。

　Ａと赤白の関係はよく分からない。赤白がいるとＡは赤白の支配に服しているようにも見える。少なくとも食い物では遠慮する。だから時折、赤白が離れているところでＡにだけ食糧をあげる。
　それでも別の印象を受けることもある。普通はＡは赤白よりも先に我が家の敷地を離れる。Ａが去ろうとするところを身体に似合わぬ可愛い声を出して、赤白はＡに向かってニャーニャーと鳴くのである。Ａは老いたメスで赤白は若いと見えるけれど、メスを得ようと切なく鳴いているようにも見える。
　ある意味で赤白がいるとＡも安心なのだろう。Ａは赤白とは喧嘩にならないけれど、他の猫とは必ずしもそうではない。向いのＫさんの家のＮとＧのオス猫コンビが我が家の敷地内に来ると、Ａは追い出されてしまう。このオス猫と渡り合えるのが赤白である。

　Ａと赤白が我が家にいつ現れるかは、実は日によって異なる。朝から来る日もあるけれどなかなか来ないときもある。赤白だけ頻繁に現れてＡが来ないこともあるし、逆のこともある。Ａと赤白はこの敷地で一緒になるだけのように感じる。
　暑さも去ったこの季節、Ａと赤白は少し距離を置いて我が家の敷地内で寝そべっていることが多い。Ａは草の上か車の上でしゃがんでじっとしている。赤白は草の上で横になり、時折、無防備に爆睡している。そんなときには家の中でも、家猫のチーコがソファーか猫ベッドで横になって寝ている。ひたすら寝るだけの平穏な生活が猫は好きなのだ。　

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