雨猫 (2003/10/22)

　朝早く、寝ている私の上に家猫のチーコが乗る。ニャーと鳴いて私をおこす。おこすのは私である必要もなかろうに、猫の都合ですぐおきるのは私である。だからチーコはもっぱら私をおこそうとする。何か食べたいのだろう。そう思えば放っておくのは可愛そうなのでホイホイとおき上がって台所に向かうと、チーコは私の足元を喜んでついて来る。チーコは昨夜あまり食べていないだろう。だから腹を空かしていると思い、値段が高めの、外猫にはあげない缶詰を取り出してチーコの皿に盛る。チーコは少し間を置いてから食べ始めた。
　外は雨が降っている。
　外の猫も来ているかも知れない。そう思ってドアを開けて外に出る。温室の透明な壁面は黒っぽい猫Ａの姿を映し出している。傘をさして温室に近づき、中を見ると、中にはＡと赤白猫がいる。
　この猫温室の中では、地面の上に木のスノコを置き、さらに収納棚を置いた内部構造になっている。スノコの床を１階とすれば、収納棚で広めの２階があり、さらに狭い３階がある。その２階の良い場所に赤白猫が鎮座し、Ａは３階の猫ベッドの上で座っている。実はこの温室、このところ雨が降ると雨漏りがしたのだけれど、この前から屋根にシートをかけてあるので、幸い今は雨漏りはない。２匹の猫は穏やかに上下になって休んでいる。Ａの方が高いところにいるのは、Ａの方が「偉い」ということかも知れない。
　家に戻って缶詰を取って来る。外猫にあげる缶詰は安めの缶詰である。缶詰食糧を猫皿に盛り、２階の赤白猫のそばと、１階の猫の爪研ぎの上にそれぞれ、皿を置く。普段なら私が近づくと猫は温室の外にいったん退避するけれど、今日は雨が降っているために外には出ない。赤白猫は近くの皿にすぐに食らいつく。Ａは３階から１階に飛び降りて皿に口をつけようとする。それなりに仲良く、あるいは領分を守って平和にやっているようだ。

　この日はなかなか雨が止まない。時間がたっても２匹の猫はそのまま猫温室で過ごしていた。その後にも食糧を持って行ってあげた。私が家を出るとき、敷地内にいたなら猫たちに食糧をあげるようにカミさんに頼んでおいた。
　私が帰宅したのは１９時半頃である。すでに雨はあがっている。温室に行っても猫の姿はなかった。カミさんはずっと外に出なかったとかで、外猫には何もやっていないらしい。
　夕食の後、温室に行って中を整理していた。そこにＡが現れた。Ａは温室の中に入るかと思うと、通り過ぎて家のドアの近くにしゃがんだ。ドアの近くで食糧を待つのがこのところのＡの習慣である。いったんは温室の中に置いた食糧皿を取り出してＡの近くに置いた。食べ始めたけれども、既に暗闇であるから、その姿はよくは見えない。

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