髪を切る (2004/02/01)

　昨日、家で髪を切った。この前切ったのはまだ夏だったように思う。
　そろそろ切った方がよいと思い始めたのが数ヶ月前である。そう思いながら、ものぐさな私は何もしない。次第に耐えられなくなり「切らねばならない」と思い込む。そう思い込んでから何かの弾みがあると切るのである。
　カミさんに頼んで鏡台のある寝室を整理してもらう。といっても鏡などほとんど見ない。汚してよいシャツに着替えてから切り始める。そばで猫のチーコが日向ぼっこしていた。
　切るといっても毛をつまんだ感じで短くするだけで、厳密に考えて切る訳でもない。だから整った切り方はできないけれど、私の髪を人が注目するはずがないのは分かっているので、気にしない。
　切り終わってシャワーを浴び、頭を洗った。

　実は私が最後に床屋、というか理髪店にいったのは高校３年のときである。その頃は代金が５百円くらいだったろう。それ以来、理髪店に行ったことはない。いつも自分で切っている。
　そもそも私は床屋が嫌いだった。第１に、美形ならともかく、鏡に長時間対するのは拷問のようなものである。第２に、散髪の間、理容師？の人からはいろいろ話しかけられるのが常だった。それも拷問のようなものである。
　実は私が理髪店に行かなくなったのは明確なきっかけがあった。私はずっと、郷里の自宅近くのＳ理髪店で用を済ませていた。中学生くらいになれば他の店に行ってもよかったろうに、そこは律儀にＳ理髪店に通い続けたのである。
　高校生の頃、その理髪店には、見習いかどうかは分からないが、若くて可愛い女のコがいた。私はしばらくそのコに散髪してもらっていたと思う。いまだに顔貌を覚えている。
　ところがある日、Ｓ理髪店に行くとそのコがいなくなっていた。代わっていたのが容貌の落ちる女の子だった。そのコが私を散髪したけれど、どうも扱いが優しくなかった。そのコの顔もついでに、今も覚えている。
　この世の無常を感じた。それ以来私は理髪店には行かなくなった。

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