キツネ猫 (2004/03/13)

　夜、２階の部屋の窓から下を眺めていると、物置付近から道路に向かって白い影が走ってゆく。猫である。たぶん私がキツネ猫と呼ぶ、やや小さめの白っぽい猫である。

　我が家の庭には猫の食糧を置いておく場所が３ヶ所ある。１つは温室である。この温室は猫のために建てた、２畳ほどの面積の温室であり、内部には猫用の固形食糧と水を常時置いてある。２つ目がドアの近くにある犬小屋である。この犬小屋はもともと外猫用に買った代物である。外にじかに猫食糧を置くと雨で濡れることがあるので購入した。その後、温室を建てたので必要はなくなったけれど、捨てるのももったいないので、エサ置き場の１つに使っている。３つ目がイナバの物置である。この物置には灯油、自転車、庭用品が入っている。昨年の暮れ辺りから、この物置のドアを少し開けておき、入り口付近に猫の食糧と水のお椀を入れている。
　この３ヶ所のエサ置き場のうち、猫が一番近づきやすいのは、人間の目に触れることの少ない物置である。３ヶ所の中では一番食糧が無くなる率が高い。

　件のキツネ猫とは、１年近く前にうちの敷地内でよく見かけた猫である。この猫はドアの近くの犬小屋によく、食糧を食べに来ていた。キツネ猫と呼んだのは風貌がキツネに似ていたからに他ならない。顔は面長、細面で白く、犬小屋の食糧を少しあさってはすぐに遠ざかる、という動作を繰り返す。家人は危害を加えるつもりがないので、ゆっくり食べていればよかろうと思うのに、人の顔色を見ながら hit and away で、食らったらすぐに遠ざかる。これだけの用心深さがあって生き延びているのかも知れない。
　実は上に書いた白い影がこのキツネ猫であるという確証はない。姿が白いこと、臆病そうに、しかし敏捷に動くその姿から、たぶんキツネ猫だろう、と思っているだけである。あるいは白っぽい別の猫であるのかも知れない。このところ、同じ白い影が庭を走るのを何度か見かけている。少し前にはたぶんこのキツネ猫を、ドアの近くの犬小屋でも見かけている。

　白っぽい猫といえば別の猫も最近見かけている。牛のような白と黒の猫である。白と黒の猫といえば、向いのＫさんちのＧちゃんとＮちゃんのオスの飼猫コンビも同じような色であるけれど、最近見かけた猫の方が白い部分が多い。身体は丸みを帯びていて、顔もまん丸。この猫は犬小屋で食糧を食べ、その近くで寝そべっていた。まだ庭にいるとは知らずに私がドアを開けると、私を見て逃げ去ってしまった。

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