続・猫家出 (2004/03/21)

　家猫のチーコは冬の間、家で寝続ける生活をしていた。天気が良くなると少し外に出るけれども長くは出ていない。寒かったり雨でも降っていればずっと家の中で寝ている。時折おきては食事を欲しがるけれども、食べて少しすればまたどこかでしゃがんでいるか、寝ている。
　寒い間はよく、夜、チーコはわれわれの布団にもぐりこむ。布団の中でチーコだけが、人間のように寝ていることもある。別の部屋で寝ていれば、明け方、特に寒いときに布団にやって来る。そういうときには布団の中に招き入れると布団の中に入ってくる。
　次第に暖かくなったので、チーコは人間の布団と別の場所で寝ることが多くなった。しかしまだ、あまり外を出歩くことはしない。

　その日は朝から曇っていて、早春とはいえやや肌寒かった。昼頃から雨になった。こういう天気の悪いときには温室に赤白猫が来ているだろうと思うと、案の定、赤白猫は雨が降り出す頃から温室に来て猫コタツの上で寝ている。

　雨は昼過ぎに止んだけれども、今夜は久しぶりにやや寒くなるという予報である。外の地面は降った雨で湿り気を帯びている。
　夜中の０時過ぎ、私は例によって外の猫のために食糧を何箇所かに置いていた。少しの間、ドアを開けていた。すると何時おきたのか、チーコがドアから外に出る。この時間に外に出られると面倒と思い、私はチーコを捕まえようとする。チーコは私の手をすり抜けて隣のＨさん宅との間のブロックを渡ってどこかに行ってしまった。
　そういえば以前にも、夜にチーコが出かけてなかなか帰って来なかったのも、この時期ではないか、と思った。

　暖かくなったといっても今夜は少し寒い。けれども、チーコが外に出てしまったので、ドアを閉める訳にも行かない。家人には不評と思いつつ、ドアを開けていた。外を懐中電灯をつけて見回ったけれどもチーコは見えない。まさかドアを閉める訳にも行かず、かといってドアを開け放しにするのはカミさんや娘が嫌がる。そう思ってドアを開けて、私がドアの近くにいることにした。しかし仕事があるので、ＰＣのデータをノートＰＣにコピィしてからドアの近くで仕事をしよう、と考えた。しばし２階にいてデータのコピィをしてからドアの近くに戻った。
　戻ってみるとドアが閉まっていて玄関付近の電灯も消えている。チーコが出てしまったと娘には言ったのであるけれど、カミさんは、娘がドアを開けておくのは嫌だといったという。チーコが出たと知ってドアを閉めたかったのはカミさんも同じである。ほんとに女はケチで冷たい。
　またドアを開け、寒気が別の部屋に行かぬように部屋の戸はすべて閉めた上で、私がドアの近くにいた。時折、外に出たり、近くを見回った。そのままチーコがいなくなるとは思わないけれど、なかなかチーコは戻らない。

　しばらくして、もしやチーコが温室にいないかと思い、温室のドアを開けると、中に赤白猫がいて固形食糧を食べていた。
　ドアの近くに戻って少しすると、出て行った方角からチーコが尻尾を太くして戻って来て、ドアを通って家の中に入った。チーコを居間に入れるとカミさんがストーヴにあたっている。その近くにチーコはやって来る。私が近づくとやはり、私にも擦り寄ってくる。怖い思いをして尻尾が太くなったのか、あるいは家に辿り着こうとして焦って尻尾が太くなったのか、などと思いめぐらせた。
　そういえば以前もチーコが夜に猫家出をしたとき、外猫のＡが現われたと思ったらチーコが戻って来た。この展開は偶然なのか、と幾分不思議に思った。

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