猫ドア（２） (2004/10/21)

　赤白猫をピアノ室部屋の空き空間に入れて平穏だったのはわずかな時間に過ぎない。この件にはカミさんと娘からすぐにクレームがついた。猫は気まぐれであり、閉じ込めておくことはできない。気が向いたときにどこかにトイレに行く。だからガラス戸は少し開けておくことになる。しかし夜、戸を開けておくというのは防犯上まずい、とカミさんが私に強く言う。私が開けておいてもカミさんが閉めてしまう。
　ピアノ室部屋にこのガラス戸から入れば、台所に至る。だから無用心といわれればそれまでである。ガラス戸１枚、鍵を閉めたところで防犯にはならないと私は思ったけれど、カミさんと娘は嫌だという。
　だが私もそう簡単に諦めるはずもない。防犯のため？、私は夜、ピアノ室部屋のガラス戸を少し開けて赤白を中に入れながら、このピアノ室部屋と接する台所の場所に寝ることにした。はじめはそのまま台所の床に寝ていたけれど、次からは布団か座布団を敷いて寝た。結構疲れる。この異様な生活は１０日ほど続いた。

　その間、あることに気がついた。確かドアに、猫の入り口になるドアを付けられたはずである。猫用品店に売っていると思い、楽天市場のペット用品サイトで商品を探した。あるものである。値段は高くても１万円だった。なぜか何れもイギリス製という。その中にガラス戸に直接付けられるタイプのものを見つけた。注文した。
　猫ドアが届くのに数日を要した。しかしそれだけで猫ドアがつく訳ではない。今度はガラス戸の業者に猫ドアをつけるように依頼した。工事に来てくれるまでにやはり数日を要した。やっと玄関ドア脇、ピアノ室部屋のガラス戸に猫ドアが付いたのは、忘れもしない、９月１４日のことである。これでやっと、普通に布団で寝られる、という感慨を抑えることができなかった。

　問題はこの猫ドア、つまり押せば開閉可能な細い穴を通って猫が出入りする気になるか、ということである。そこですぐに、赤白を捕まえて猫ドアに押し込み、このドアは通れることを学習させようとした。赤白はすぐにこのドアを通ることを覚えた。それを見た若猫たちも、すぐに真似をしてこのドアを通るようになった。

　以来、赤白はこの猫ドアを通ってピアノ室部屋の中によく入る。夜はピアノ室部屋の中で寝ている。来なくてもよいのに、若猫たち、特に毛長猫と白猫もこの部屋の常連になった。赤白が居にくくなることを恐れ、私は時折、若猫たちはピアノ室部屋から威嚇して追い出す。お前たちにはあの猫温室があるではないか、赤白はそこに居られないからこの場所を作ってあげたんだよ、と思うけれど、むろん猫には伝わらない。

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