デーミアン (2006/01/15)
高校の頃、ヘッセの『デーミアン』が好きだった。この小説には強いメッセージがあり、そのメッセージを私は私なりに記憶にとどめている。その箇所がどこだったかと、その頃読んだ文庫本を取り出して探してみた。探しながら、あーここだな、と思った。ぼくは自然の手で投げ出されたものだ。…この原初の深淵からの一投を思い切り働かせ、この一投の意志を自己のうちに感じ、それをすべて自分の意志にしてしまうこと、これだけがぼくの天職なのだ。これはまた、ひどく孤独な感覚ではないのか。しかし嫌な孤独感ではない。厳粛な孤独感というべきかも知れない。 この感覚に近いイメージを抱くのは星空を一人で眺めるときである。 一人星空のもとで自分に向かう。いや、この感覚は一人で神に対峙するプロテスタント的なキリスト者の感覚ではないのか、と思うこともある。 バッハの音楽を聴いているとふと、そんな感覚を味わう。一人で星空を眺めるような感覚である。同じ感覚を他の音楽に感じることは少ない。ベートーヴェンという人は孤独に戦った人かも知れないけれど、この人の曲は絶えず、傍に人がいるような安心感を与える。モーツァルトも然りである。 先日買って来たバッハのフルートソナタのＣＤを聴きながら、そんなことをふと思った。 |
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