２階のテレビ猫（１）　 (2006/11/23)

　野良の「テレビ猫」を捕まえて２階の私の部屋のケージに置くようになったのは、２週間くらい前からではないかと思う。

　テレビ猫は茶と白で、尻尾が短く、形相が良くないオス猫である。顔や身体が角ばって四角く見える。そこで下の娘がいつしか、「テレビ猫」と呼んだ。四角だからテレビというのは短絡的発想というべきか、自由な発想というべきか？
　このテレビ猫が我が家の庭に現れたのは、死んだ赤白が元気だった頃からだと思う。その頃は赤白がテレビ猫を追い払っていた。赤白が死んだ頃には、テレビ猫が庭に来ることは滅多になかったように思う。また現れ始めたのは、現在の庭猫の構成になってからである。
　私が白たち庭猫に食糧をあげようとすると、テレビ猫は近づいてくる。テレビ猫を追い払おうとすると他の庭猫たちも驚いて逃げてしまう。だからテレビ猫を追い払いのは難しい。庭猫たちに食糧をあげるとその食器に割って入って食べてしまう。仕方なくテレビ猫にも別食器で食糧をあげるようになった。
　このテレビ猫は意外と行儀が良かった。私を見ると近づいてきて、ちょこんと座り、いつまでもじっとしている。私が見ているところでは、私がテレビ猫に差し出した食器からしか食べない。だから何やら私も頼られているような気がして、食糧だけはあげるようになった。

　食糧をあげるようになって、やろうと思えばテレビ猫を捕獲できるようになってからのことである。この猫を捕まえて動物病院に連れてゆこうかと何度も考えた。捕まえることができなら、捕まえて去勢手術を受けさせることが、野良猫に食糧をあげる者の義務だからである。
　しかし捕まえて病院に連れて行った後にどうするのか、と考えて、捕まえることを逡巡した。この猫は、検査すれば悪い病気を持っているに決まっている。だからこの猫が口につけた食糧の残りはいつも廃棄したし、食器は消毒していた。この猫が猫エイズか猫白血病に感染していることは、たぶん分かるだろう。しかしその後にどうするのか？　感染しているなら私の家では放し飼いでは飼えない。では捕まえてケージにでも押し込めておくのか。しかし野良猫は、押し込めておとなしくしていることは少ない。家の中に押し込めていて、泣き叫べば、私の家族はすごく嫌がる。ではどうしたものか？　判断がつかずに、この猫が庭にやってくるに任せて時間が過ぎていった。
　テレビ猫はいつも夕方か夜に現れる。食糧を食べさせると、逃げるようにどこかに去ってゆく。
　たまに何日か、テレビ猫が現れないこともあった。そんなときは私は庭でテレビ猫を探すようになった。いつも来る猫がいないことで心配してしまう。だから心理的には、いつしかテレビ猫は私の飼い猫になっていたのだろう。
　テレビ猫は死んだ赤白と顔は似ていないが、毛の色の配合などはよく似ている。この猫を見ながらいつしか、死んだ赤白を思い出すこともあったのかも知れない。

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