２階のテレビ猫（３） (2007/01/03)
| さても、テレビ猫を捕まえて籠に入れている間に私は２階の自分の部屋に急いだ。この部屋には、Ｑちゃんがいるケージの隣に、使っていない、やや大きめのケージがある。このケージは内部が３段になっていて、猫を収容するには十分と思える。以前、猫の赤白を入れていたのであるが、赤白が死んでからは使っていなかった。すぐに中を使えるようにし、使わない猫トイレを物置から出して猫砂を積め、ケージの中に置いた。このケージの中に籠の中からテレビ猫を移した。 テレビ猫が来たので他の猫たちが興味を持って近寄る。それではテレビ猫が苦しかろうと思い、一番上の段の部分を布（使わない布団カヴァー）で覆い、その段にいれば隠れられるようにした。食糧をあげるとテレビ猫は外にいたときのように無心に食べた。 外で気ままに暮らしていた猫をいきなりケージに入れると、泣き叫んで収まらないことがある。実は猫の赤白も、外に出ようとして騒ぐので、具合が悪くなる前には外に戻さざるを得なかった。しかしテレビ猫はケージに入れても騒ぐでもない。食糧をあげるとよく食べる。 テレビ猫は、顔は赤白並にでかい。しかし体つきは赤白より小ぶりであり、たぶん赤白ほどの腕力もない。 テレビ猫を家の中に収容したのはある意味で実験だった。ケージの中で収まるかどうかは分からない。騒ぎ続けるようであればまた外に出す以外はないのである。しかしテレビ猫は騒がなかった。捕らわれたことを嫌がりもしていないように見える。 テレビ猫はこの家の中に入りたかったんだろうな、と思った。この家に入れてもらう機会をこの何ヶ月か、ずっと待っていたのではないか。そう考えた。 テレビ猫はもともと声を発さない。たまに発することもあるけれども、潰れたような、しわがれた小声である。２階のケージの中のテレビ猫は、声をほとんど発することもなく、負担は寝ている。食事にありつけるときだけは２段目の床でしゃがんで、行儀良く、庭先にいたときのような格好で私を待つ。あいかわらずよく食べる。他の猫たちの倍も食べる。食べる量に見合った糞尿を出す。 もともといかつく険しい顔をしていたテレビ猫であるが、ケージの中にいると次第に飼い猫のような、穏やかな顔つきになっていった。この猫のためにはこれでよかったのだろう、と思える。時折身体拭き用のシートで顔や身体を拭いてあげると、他の猫と同様に喜ぶ。 テレビ猫は悪い病気があるように思う。以前から多量に水を飲む（この点は赤白と同じだった）から、腎臓か肝臓に悪いはずである。その水がよだれですぐに濁る。Ｑちゃんのように、悪性ウィルスのために口内炎があるかも知れない。そして、これだけ食べても太らないのは、あまり吸収されないのかもしれない。もっとも食欲は落ちないので、当座は深刻な面はないのだろう。 テレビ猫のことは動物病院に連れて行って検査してもらうべきかもしれない。しかし私は、この猫のことは病院には連れていくまいと思っている。基本的には外にいるのと同じ状態でよいだろう。死ぬようなことがあればそれはそれでよい。しかし死ぬまでは、暑さ寒さから逃れられる空間と食事は与えてやろう。そう思っている。 （とりあえず完） |
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