忠ネコ小白　 (2007/03/07)

　小白（こしろ）とは、我が家の庭猫であるオス猫の白（しろ）を父親とするオス猫である。白は白いから白と名づけた。その白と一緒にいた母子（ははこ）というメス猫がある日、何匹か子供を生んだが、その中に白とそっくりの白い子猫がいた。それ以上の確認はしていないけれど、父親が白であるのは明らかである。白の子供であるから小白と呼んだ。父親の白のことは我が家で大白（おおじろ）と呼んで小白と呼び方を区別するようになった。
　小白は子猫のうちこそ名の通り小さかったけれど、成猫になった今は大白より大きい。骨格的には同じくらいだけれども、筋肉質の大白に比べてやや肥満体であるため、体積は大きい。抱き上げると家猫チーコの倍、トシちゃんの３倍くらいあるので、６Ｋｇくらいあるように思う。
　もともと野良だった大白に比べると、小白は生まれた頃から私の敷地内にいる。大白が出歩いてばかりいるのに対し、小白は我が家の敷地内に留まることが多い。勢い、我が家の敷地のテリトリーを守ろうとする行動が最も強く、他所から来る猫を追い立てようとするのは決まって小白である。そのため、大白よりも小白が、我が家の庭猫のボスのように見える。

　ある朝、いつものように庭猫たちに庭で食事をあげた。大白、小白らが集まってくる。その折に小白を眺めると、小白の後ろの片足の付け根辺りに傷があるのを見つけた。穴があいているようになって、膿を含んでいる。そこで小白を捕まえて動物病院に連れて行った。院長の見立てでは、幸い傷は治りかけていて、切開しないでも抗生物質を与えればよい、という診断だった。その場で注射を打ってもらって薬をもらって帰った。しばらく、朝夕の２回、抗生物質の錠剤を与えることになった。私が小白を抱きかかえ、カミさんが薬を口の中に放り込む、という分業体制で対処した。

　今朝、いつものように食事を与えるときにはいた小白であるが、すぐに「猫部屋」の高いところに登って、捕まえることができない小白であった。朝から仕事があるので、小白への投薬はスキップして私は仕事に出かけた。
　暗くなって私が家に帰るといつものように小白を含めた庭猫たちが玄関先に集まってくる。食糧をあげてから小白だけを私が抱え、カミさんに薬を飲ませてもらった。
　夜も更けて外は寒くなった。タバコを買いに行こうとして私はコートを着て外に出た。すると小白が私を目がけて走ってきて、私の足元に寄って来る。私が家を出て歩き出すと足元についてくる。そんなときは私は引き返してしまう。そのまま私についてきたら、小白は道に迷ったり、太い道路で交通事故にあうかもしれない、そう考えて小白がついて来るままに外に出ることに私には不安があるのである。
　家を出ようとする私についてくる、という行動をしばしば小白はとる。そしてそのような振る舞いを見せるのは小白だけなのである。そんな小白は可愛いけれども、外に行って用を足したい私には迷惑でもある。
　そんなときの常套手段として、私は「猫部屋」に入って食糧を皿にあけた。案の定、小白は猫ドアを通って猫部屋に入り、私があけた食糧を食べ始める。その隙に、小白を振り切って私は家を出、外に出かけることができた。
　タバコを自販機で買って帰る道すがら、目の前の空にほぼ満月となった月がやけに明るく光を放っていた。

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