犬のピーちゃん　 (2007/06/30)

　猫だらけの我が家で犬のピーちゃんを飼い始めたのは３月の中頃のことである。

　発端は野良猫のクロを捕まえて動物病院に去勢手術を受けさせに行ったことだった。その折、動物病院の院長が私とカミさんに、犬を飼わないか、と問う。ポメラニアンのメスの子犬である。ペットショップにいたこの犬は、生まれながらに心臓に畸形のあり、経緯は分からないが院長が引き取って手術をしたところ良くなったらしい。身体的には今後、問題はないという。院長はその後、この犬の引き取り手を捜し、何人か申し出があったという。ただ、ちゃんと育てるかどうか不安があるので、猫の面倒をよく見る私のところに声をかけたという。
　後でカミさん経由で聞いた話では、申し出をした人というのは、「純血のポメラニアンがタダで手に入るなら」という言い方だったという。犬を商品扱いにするその点に不安があったようなニュアンスだった。
　ウチの場合は猫がたくさんいるけれども、純血種であるとかナントカは気にしたことはない。そもそも、放っておくと死にそうな猫を引き取っているだけである。猫はみな、可愛いものであるが、命だから大切にしようと思っているだけである。
　さて、そのポメラニアンについては、実は私は引き取るのを断るつもりでいた。が、予想に反してカミさんが引き取るといい、連れ帰ることになった。
　ポメラニアンには「ピーちゃん」という名前をつけた。由来は忘れたが、猫にＱちゃんがいたからかも知れない。もともとは「アスカ」という名前であったらしい。が、我が家の場合、そんなもったいぶった名前にはならない。

　まずピーちゃんの居場所が問題だった。結局、上の娘の部屋にサークルを置いて飼うことになった。
　カミさんの目算では、ピーちゃんを最初に試しに連れて来たとき、傍に家猫のチーコがいても、チーコはピーちゃんを気にしないようだった。チーコは３．３Ｋｇくらいであるがピーちゃんは小さく、１Ｋｇもなかったように思う。
　ところがピーちゃんを本格的に連れてきたとき、ピーちゃんは飛び跳ねてチーコに近づき、チーコは飛び上がっておびえたようになった。案の定、と思ってチーコとピーちゃんを引き離すことにした。ピーちゃんが上の娘の部屋に置くことにしたのは、それからである。
　見ていると、ピーちゃんは人が来ると後ろ足で立ち、ハーハーといって寄って来る。抱き上げると嘗め回す。猫とは生態が著しく異なる。犬も可愛いものだと思う。
　以後、ピーちゃんのウンコの世話は、上の娘とカミさんが担当している。
　ピーちゃんは次第に大きくなった。といっても現在２Ｋｇくらいであり、猫より小さい。少し前にその動物病院で毛を刈ってもらったのだが、身体が太っているわけでもないけれど、毛がふんわりしているので、短く太い丸太のような格好になっている。

　２階の私の部屋には猫たちがいる。その傍に、ピーちゃんのいる上の娘の部屋がある。私の部屋を開けると猫のモモちゃん（オス）が時折、部屋を飛び出してしまう。あるとき戸を開けざまに廊下に飛び出したモモちゃんが、ドアの隙間を押して上の娘の部屋に入った。部屋の中にはサークルの中にいるピーちゃんがいて、両者、顔を見合わせる。ピーちゃんは猫を恐れるでもなく近づく態勢をとったかと思うと、体重は倍以上ある猫のモモちゃんの方が娘の部屋から逃げ出し、もといた部屋に戻りたそうにする。身体が大きいのに臆病なモモちゃんである。

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