雑感：Ｑちゃんの１年余

　Ｑちゃんの１年余　 (2007/08/13)

　オス猫のＱちゃんを庭で保護（捕獲）したのは昨年の６月のことだった。既にＱちゃんは、我が家に１年と２ヶ月ほどいることになる。
　昨年の６月のある日、庭の温室の近くでこの猫がいるのを見つけた。フワっとした毛の猫に見えた。おとなしい。逃げずに寄ってくる。身体は大きい方で、顔がでかいところが、本来はリーダー格のオスなのではないかと思えた。腹が減っているようなので固形の食糧をあげてみた。食べたと思う。他の庭猫たちがそばにいたけれども、なぜかこの猫には近づかなかった。普通であれば見知らぬ猫がいると庭猫たちは威嚇する。喧嘩にもなりかねない。が、なぜか庭猫たちはこの猫には喧嘩をしかけなかった。この猫が、偉そうな物腰の猫だったことがあるかも知れない。この猫が病気を持っていることが他の猫たちには分かったからかも知れない。
　普通、見知らぬ猫は私を見れば警戒して距離をとる。私が近づけば逃げる。しかしこの猫は逃げなかった。ここにいさせて欲しい、と言っているように見えた。
　この猫が明日になっても庭にいるようであれば、保護しよう、と考えた。その前に去ってゆくなら、去ってゆくに任せよう、と考えた。
　夜、やはりこの猫は庭の、温室のそばにいた。次の日になっても庭にいた。やはりこの猫はここにいたいのだろう、ここしか居る場所がないのだろう、と思って保護することにした。ほとんど抵抗しない猫であるから、籠に入れるのは苦労しなかった。２階のベランダに置いておいた猫のケージを私の部屋の中に持ち込み、この猫を収容した。

　収容するときに分かったのは、この猫の口臭がひどいことである。口の中がただれているようだった。また、この猫がふわっとした毛をしていると見えたのは、抜けた毛が全身に付着したままになっていたためだった。
　すぐにこの猫を動物病院に連れて行った。
　検査の結果、猫エイズだと分かった。エイズだと免疫系が弱くなる。そのためにこの猫に生じているのが口内炎である。口の中の炎症が抑えられない。口内炎がひどいために食事ができない。そのままでは死んでしまうという。投薬で対処することになった。
　身体に抜けた毛が付着しているのも、猫特有の、身体を舐める行為が、口内炎のためにできないからだろう、という。
　病院でこの猫に名前をつけることが求められた。記録では、この猫は私がこの動物病院に連れて行った猫の９番目であるという。そこで「Ｑちゃん」となった。
　以後、Ｑちゃんには毎日、インターフェロンの粉薬を与えている。毛が付着しているのでブラシをかけるようになった。Ｑちゃんは体中がベトベトしている。身体を舐められないためかも知れない。そこでＱちゃんをほぼ毎日、ケージから出してペーパータオルで身体を拭いてやる。調子の良いときは身体を拭いてやることできれいになるのだが、調子が悪いときにはやはり身体がベトベトになる。
　インターフェロンの薬をあげてはいるが、それでも、口内炎は悪くなる。悪くなって食事が取れなくなったらステロイド系の注射を打ってもらう。すると一時的に回復する。この注射は頻繁には打てない。打ってよい間隔になるまでいかに持たせるかが問題になる。
　Ｑちゃんの体重は５Ｋｇを前後している。体調の良いときには５Ｋｇを超えているが、体調が悪く食事ができないと体重が落ちる。
　Ｑちゃんのことは私の部屋のケージに押し込めたままにしてある。１つには、私の部屋には猫が沢山いるので、一緒にしておくと攻撃されてしまう恐れがある。がそれ以上に、病気を持ったＱちゃんを猫たちのために隔離しておく必要がある。
　Ｑちゃんはもともとおとなしい、鷹揚な猫である。可愛がられることを当然のように受け止めているところがある。だから、ある時点までは家猫として可愛がられていたのではないかと思う。
　こうした生活に満足しているのかどうか、Ｑちゃんはいつものケージの中で、始終横になっている。時折おきて、丸い顔、丸い目をして私の方を見ている。

　Ｑちゃんを連れて行ったとき、動物病院で「アビシニアンが入っているのでは？」といわれたことがある。アビシニアンというのはどういう猫かは分からなかったが、まあ、由緒のある種の猫なのだろう。その言葉は単なるお世辞かと思っていた。が、あるとき猫の本を見たときに、アビシニアンの猫の写真が載っていた。なるほど、Ｑちゃんと似ている特徴があった。Ｑちゃんはいろんなのが混じっているとは思うが、一部、アビシニアンが混じっていて不思議はない、と思った。
　ケージに閉じ込められているＱちゃんが一瞬、ケージの外に出るのは、私がＱちゃんの身体を拭いてあげるときである。そのときについでにＱちゃんのトイレの掃除もする。忙しいときにはスキップするしかないけれども、時間があればこうやってＱちゃんをケアをする。ケージから出して身体を拭かれるとき、Ｑちゃんは横になって私の膝に爪を立てる。うれしくて爪を立てるのだと思う。で、私が履いているのが厚手のジャージであるときには爪を立てられてもよいが、薄手のときには私が痛い。特に膝が抜けているジャージで膝に爪を立てらたときには、当然ながら辛かった。
　そのことを話すと、カミさんは私のために膝当てを買ってきた。ママさんバレーで使うような膝当てである。そいつを膝につけてＱちゃんの身体を拭いてみた。さすがに爪を立てられても膝は痛くない。しかしＱちゃんにしても、それでは物足りないのか、膝当てがあるときにはあまり爪を立てないようである。

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