ワル黒子（１） (2007/12/22)
| 黒子（クロコ）とは、私の庭によくいたメスの野良猫のことである。正確にいえば三毛であると思うが、黒の部分が大きいので「黒子」になった。母親はトラ猫の母子（ハハコ）である。父親は分らないが、たぶん、以前からよく姿を現していたクロだと思う。 現在は避妊手術を施した母子であるが、一時はしょっちゅう妊娠しては子供を産んでいた。別の場所で子供を産むが、後で我が家の庭に子供たちを連れてきて育てていた。多くの子猫は死んでいるようであるが、ある程度生き残った小猫たちの１匹が黒子である。 黒子は性格がきつく、人間への警戒心が強い。人が近づけば逃げるし、手を出せば引っ掻こうとする。同じ母子の子供で、黒子より後に生まれた小黒（コクロ）は、外見的には黒子と似ているが、人に近づくのを怖がらない小黒は、黒子に比べて扱いが簡単である。 黒子は外見的に面白い猫である。しっぽが短くズン胴であるから、「猫じゃないみたい」と家の者もいう。ムーミンか何かを思わせる。 しかも、顔の下半分の毛が真っ黒で、口の存在が目立たない。そこで、何やら顔の下半分が覆面をしているようで、ワルのように見えてしまうから面白い。 黒子も１歳を過ぎたあたりで妊娠し、子供を産んだが、生まれた子はみんな死んでしまった。 黒子を捕まえて避妊手術をさせることは長い間の、私とカミさんの懸案だった。しかしあるとき、うまくカゴの中に入っているときがあり、そのままカミさんが捕獲した。苦労して動物病院に連れて行って避妊手術をさせた。 黒子が現れれば私は食糧をあげる。そんなことで、黒子は我が家の庭猫として定着していった。黒子には猫ドアを通って家の中（猫部屋）に入ることも許している。 しかし猫間関係というのもなかなか微妙である。人間と同じで、メス猫同士の関係が難しい。黒子の場合、母親の母子との折り合いがうまくないらしく、母子がいるといなくなってしまうこともある。気質的には、母子と黒子は相互にきつく、難しいのである。 黒子はふだん、我が家とはさほど離れていない場所でたむろしているように思う。私が家に戻って、他の庭猫たちに食糧を出そうとすると、他の猫たちに遅れて現れる。決まって他の猫たちと距離を置く。そして食べ終わるとどこかに行ってしまう。 愛想のない黒子であるから、私のカミさんは黒子が好きではない。なついてないのだから仕方ないのだろう。 しかしそういう黒子であるから、私は余計気になる。よく現れる、私が抱くこともできる猫であれば、具合が悪ければちゃんとやって来る。そこで動物病院に連れてゆく、ということもたやすいのである。 しかし母子とともに黒子は、具合が悪そうでも捕まえることができない。他の猫たちとの折り合いがいまいちである分だけ、寄ってこないから心配なのである。 黒子を２度目に捕獲したのは、後ろ足を骨折したときである。そのときは黒子もあまり動けなかったから、猫部屋にいたところをなんとか捕まえて籠にいれることができた。ところが、動物病院に連れて行ってからも逃げ出しかけて、大捕り物の末、やっと骨をつなぐ手術をした。 さて、たぶん１１月になったときと思う。我が家の猫部屋の猫ドアが壊れていた。その猫ドアを以前に買った新品と取り換えた。が、よく見るとその猫ドアの前に血が付いている。何が起こったのかは分らないが、猫が怪我をしたように思えた。 食糧をあげようとすると猫たちが寄ってきたが、黒子が歩く後には血が垂れていた。見たところさしたる外傷はない。しかし血を流しているから、どこか怪我しているのだろう、と思えた。しかし黒子のことを捕まえることはできない。どうしたものかと考えた。 （続く） |
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