トシちゃんの１年　 (2007/12/31)

　病気猫のトシちゃんを外で保護して家に連れてきたのは昨年の１２月２１日である。そのときはブラリと日帰りで京都に出かけ、帰ってきたその夜中であるから、忘れられない。トシちゃんが家に来て、既に１年を過ぎたことになる。
　保護した当初はガリガリに痩せていて、身体じゅうベタベタしていた。病院に連れてゆくと猫白血病であると分かった。舌潰瘍があるらしく、身体を舐めることができない。そこで身体はベタベタになるようである。
　当初は動物病院で安楽死を示唆されていた。しかし食欲があるので頑張らせることになった。私の部屋のケージに入れ、感染を避けるためにケージからは一切出さないでいる。インターフェロンの粉薬を水に溶いて私が口から与え、その間にペットティッシュで身体を拭いてあげる毎日が続いた。
　その後、ステロイドの錠剤を飲ませるようになってからは状態が安定した。今年の秋頃には大分体重が戻り、太るとまではいかないけれど、普通の猫の体形になっていった。
　それで安定するかに見えた。

　日記を調べると１１月１１日のことである。いつものように３週間ごとに動物病院に連れて行ったら、体重が３００ｇほど落ちているという。血液検査の結果、腎臓がさらに悪化したと動物病院で言われた。トシちゃんのことは毎日触って薬を与えていたけれど、毎日のことであるから私は変化に気付かなかったようだ。入院させることになった。
　数日して退院したが、状態が良い訳ではない。２日に１度、点滴に通わせる日々が続いた。
　退院直後、薬が効いているうちは安定しているように見えたが、すぐに状態が悪くなった。食糧をあげても食べない。口を食糧まで持って行くまではするが、食べない。今まで、毎日相当の量の水を飲んでいたのに、水も飲まなくなった。
　動物病院では「３ヶ月くらいの命だろう」と言われていた。トシちゃんを保護したのが１２月２１日であるから、１年にあと１か月ある。１年までは生かせてあげたいと思った。
　腎臓が悪くなると痙攣が生じるらしい。そうなるといよいよ悪いということになるので、痙攣が生じているかどうか、よく見るように言われた。
　動物病院で流動食の缶を買ってきて、注射器で口から流し込む日が続いた。相当の量を無理に流し込む、押入れるのであるから、トシちゃんも顔をそむける。手が２本しかないとうまくトシちゃんを押さえつけることができない。結果、多くの流動食が周囲に飛び散ることになった。しばらくの間、普通の食糧をトシちゃんのケージの中に入れることはなかった。
　そんなこんなで１２月になった。１２月の上旬、ふと見ると、トシちゃんは少し、自力で食糧を口にしていた。水も少し減っているから、自力で飲んだのだろう。点滴には継続して通れて行っているが、状態は良くなっている、と動物病院で言われた。
　そして１年目にあたる１２月２１日を迎えた。まだ要観察で病院には連れてゆくが、今回は危機を脱したようだった。身体の動きも元気な時に近づいてきたように見える。

　猫というのは、特段何かをしようとする訳ではなく、生きていればよいかのように生活する。その点はトシちゃんも同じである。狭いケージの中にいて、特に不満そうでもない。だからといって生きることがどうでもよいのかというと、そうではない。トシちゃんは生きることに強い意志があるかのように見える。

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