タカちゃん事件　 (2008/03/31)

　３月２７日はいろいろと人に会い、２１時頃に自宅最寄り駅に着いた。カミさんに車で迎えに来てもらった。私が車に乗るとカミさんが結構重大なことを平気でいう。
「猫のタカちゃんを部屋から逃がしてしまった」

な、なに？！

　タカちゃんとは、割と最近、庭の物置辺りにいたところを捕まえた茶トラの、若いオス猫である。茶トラといっても、色はやや薄い。この猫、人に近付くのにそれほど抵抗がなかったから、元来は飼い猫で、何かの事情ではぐれたのかも知れない、と思う。
　この猫は何日か、私の庭にいてどこかに行きそうもなかった。かといって、他の猫たちとの折り合いは良くない。考えてみると他の猫たちは、何らかの形で血縁関係があったり、肉体関係があった猫たちであり、この猫だけがよそ者だったのである。捕まえて病院で去勢手術を施した。検査をしてもらうと病気はなかった。外に置いても我が家の庭しか居場所はなさそうであり、他の猫たちとの折り合いも悪い。そこで私の２階の部屋に置くことにした。やはり他の猫たちとの折り合いが悪い。そこで大きめのケージに入れてしばらく飼っていたのである。幸い、タカちゃんに対しては家の者も「可愛い」といって好意的である。
　３月になって１階に６畳の部屋が増設された。その機に、病気猫のＱちゃんとトシちゃん、それに健常ではあるけれどタカちゃんをその１階の部屋に移した。
　私の２階の部屋では、これらの猫が出て行ったので、大白たち他の猫が嬉しそうだった。今までが過密だったのである。
　ともかく、タカちゃんたちは１階の、外が見える部屋に移動したのである。外が見える部屋に移動することで、病気のトシちゃんやＱちゃんもやや元気になったような気がする。
　さて、このタカちゃんらがいる部屋は、家猫のチーコとの接触を断つために家の他の部分とは分離している。私が仕事に使うくらいである。が、タカちゃんは他の家族からも受けが良く、タカちゃんのトイレは（タカちゃんのだけは）カミさんが始末をしてあげる、という。かくして、カミさんもタカちゃんのいる部屋に時折入る。
　そのカミさんが、外とのガラス戸を網戸にしていたという。その間にタカちゃんが外に逃げ出したらしい。

　「網戸にしていた」と聞いて私は「このアホ妻」と心で思ったが口にはしなかった。なにせいろいろ猫の世話もしてもらっている。しかし、猫を外に出さないようにする配慮の点では、極めて甘い。
　家に着くなり、私は暗がりの中で庭を見て回った。カタちゃんは物置にずっといたくらいであるから、遠くに行くとは思えなかった。きっと家の付近にいるだろう、と思えた。タカちゃんは見えず小白や小黒がいる。まずいのは、タカちゃんは小白たちと折り合いが悪く、この辺りを追い出されてしまう可能性があることだった。
　タカちゃんは以前、物置辺りで見かけていた。だから今回も物置付近で私はじっと待った。食糧の音などを出してみた。
　庭を猫たちが動く様があちこちで見える中で、やや白い猫の影が見えた。別方向に小白がいるから、その影は小白ではない。タカちゃんだろうと思った。いったん逃げて、タカちゃんは別の場所から現れた。それで、タカちゃんがこの付近にいることは確認できた。
　しかし、部屋の中では私に馴れた猫とはいえ、外に出ると猫はなかなか人には近づいてこないものである。そこで食糧を置いたり、マタタビを振ったり試したが、タカちゃんは捕まらない。
　問題は、この庭の常連猫たちに威嚇されて、隠れたり逃げたりしてしまうことである。
　タカちゃんがずっと植込みの中にいるのが分かった。小白たちがその付近にいって唸る。だから、タカちゃんも出てこられない。小白をどけても、また戻って来てしまう。
　植込みの中にタカちゃんの姿が見えた。私がいる場所から１ｍほど先である。踏み込むことはできるが、近づく前にタカちゃんは逃げてしまう。そこでタカちゃんが使っていた食器のお盆を出してきて、タカちゃんの前で食糧の音を立てる。タカちゃんは近づきたがっているように見える。そこで、タカちゃんが好きなレトルトのパックを出して見せる。その食糧を食器に入れると、身を乗り出して近づいて食べ始めた。そこを、腕（前脚）を捕え、タカちゃんを捕獲して部屋に連れ戻した。
　家に戻ってから１時間ほどの捕り物だった。

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