トシちゃん死去　 (2008/06/07)

　病気猫のトシちゃんは２００８年６月６日（金曜）の午前１０時頃に亡くなった。

　既にトシちゃんはかなり危険な状態にあったといえる。このところずっと、流動食の強制給餌をしていたが、ぐったり丸まって眠っていることがあって、強制給餌をするのもためらうことが多くなった。５日の晩も強制給餌は見合わせた。トシちゃんを見ていると、小刻みに身体が震えているように見えた。軽い痙攣が既に起こっているように思えた。今晩のうちに死ぬこともあるかも知れない、と思えた。

　次の６日の朝は、７時に起きるつもりがやや寝坊した。１０時から会議があるので、９時６分発の電車に乗らないといけない。急いで猫たちに食糧をあげて回った。トシちゃんに強制給餌をするかどうかは迷った。どのみち、今日も動物病院に連れて行って点滴をするので、無理に強制給餌をしないでもよいかも知れない。しかし口から摂る食糧と水分は重要と医者から言われており、昨夜は強制給餌をスキップしていた。
　幸い今朝は、トシちゃんは身体を起こしてしゃがんでいる。ある程度しっかりしているように思えた。だから強制給餌をしようと思い、お湯に溶かした粉ミルクを用意した。ケージからトシちゃんを出し、抱いてから口に注射器でミルクを流し込んだ。普段ならもっと強く抵抗するのに、この日は抵抗力も弱かった。
　私の膝の上で、トシちゃんはいつもよりぐったりしているように見えた。それだけ弱っているのだと分かった。
　朝早く出て夜遅く帰る私は、土日以外はトシちゃんの病院通いをカミさんにお願いしている。カミさんは早めにトシちゃんを病院に連れて行きたいというので、私と一緒に出ることにした。私が寝ているトシちゃんを起こして籠に入れた。
　カミさんの車に乗り、私はトシちゃんを入れた籠を膝の上で抱えた。駅前で車を降りるときに籠の中のトシちゃんの顔を眺めた。トシちゃんはいつものように、不機嫌そうな、無表情な顔でしゃがんでいた。カミさんはその後に、トシちゃんを動物病院に連れて行った。

　私はいつもの、９時６分最寄り駅発の電車に乗った。この電車に乗るとちょうど１０時に大学に着き、会議に間に合う予定だった。
　電車は普通に走ったが、あいにくバスの道路は混んで渋滞した。いつもなら大学に着いている時間に、まだ途中を走っていた。バスの中で１０時前後になってしまった。
　そのとき、私の携帯にカミさんからメールが入った。トシちゃんが死んだという。

　何も考えずに顔を上げて前方を眺めた。私の部屋で不機嫌そうに私の方を眺めているトシちゃんの顔を思い出した。トシちゃんと過ごしたのが１年半、その間にいろんなことがあった。その間に母が亡くなった。大学でもいろんなことがあった。その１年半の間、私の部屋にはトシちゃんがずっといたのである。そのトシちゃんがもういなくなった。頭の中に空白ができたような感覚にとらわれた。

　すぐに大学に着くと会議を始めた。会議が終わって昼になると、研究室に行って自宅に電話した。あいにく誰も出なかった。
　後でカミさんから携帯メールが届いた。イトーヨーカ堂に買い物に行っているという。
　生協で文房具を見ているときに携帯にカミさんから電話がかかってきた。携帯を持ったまま外に出て、話を続けた。私が出てからカミさんは動物病院に行き、トシちゃんに点滴をしてもらった。体温が低いことに医者が気づいたという。今日中の命だろう、ということになったらしい。家で死なせようとしてカミさんはトシちゃんを家に連れ帰ったが、家に着いたときに動かなくなったという。そのまま動物病院に引き返し、死亡が確認されたという。トシちゃんの身体を病院で洗ってもらい、遺体を家に連れ帰ったという。

　その日はそれなりに忙しく、仕事の合間はトシちゃんのことも忘れてしまった。１８時頃に一応の仕事が終わると、早く帰らねばならないと思い立った。すぐに帰路についた。バスの中で支援室長と顔を合わせた。大宮駅までご一緒した。
　快速電車に乗ることができた。１９時１５分頃には帰宅した。
　玄関回りには猫たちがいたが、私はそのままトシちゃんの遺体のある部屋に急いだ。段ボールの中にタオルに包まれて、トシちゃんの遺体があった。トシちゃんはいつものような格好で動かなくなっていた。いつものような顔をしていた。カミさんが花を買ってきて供えていた。私はその段ボールをトシちゃんのケージの中に納めてから、線香を供えた。その後で、いつものように猫たちに食糧をあげて回った。

　実は３月に、増築して１階に６畳の部屋を作った。その部屋にはトシちゃんを含めて３匹の猫を連れてきていた。他の２匹とともに、トシちゃんには外の庭を見せたかったからである。具合が悪くうずくまるようになるまでは、トシちゃんは外を眺めるのが嬉しかったように思えた。

　トシちゃんを火葬にするにはどうしたらよいか、と考えた。うちでは以前に、オス猫の赤白が死んでおり、その折にも火葬して骨を庭に埋めている。トシちゃんも同様にしようと思う。赤白の時には移動式の火葬車を手配したが、やってみると、外で儀式を行うために、何だろうと見に来る人がいた。同じことをするのはためらう。人間の火葬場でもペットの火葬をしてくれるが、ネットで調べるとどうも扱いが良くない。結局、値段は高くなるが、動物病院でもらったパンフレットの、ペットメモリアルパークというところに頼もうと考えた。
　次の日の７日の朝、９時を回ったところで東松山のペットメモリアルパークに電話をかけた。幸い、明日可能だという。実は月曜以後になると仕事で私は火葬に立ち会えない。
　７日は東京で非常勤の授業があり、１１時過ぎに出かけた。終わって戻ったのが１７時頃だった。
　その後に、朝電話をかけたメモリアルパークから電話をもらった。明日８日の朝、９時に遺体を引き取りに来るという。私が車で同乗して火葬に立ち会う手筈を決めた。

　トシちゃんのことはもっと構ってあげたかったと思う。時間があれば、もっと抱き上げて、身体を拭きながら擦ってあげたかったと思う。

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