２階のテレビ猫（２） (2007/01/02)
前回まで → ２階のテレビ猫（１） かくしてテレビ猫は我が家の庭にほぼ毎日現れ、他の庭猫たちと一緒に食事をとるようになった。 しかし元来、テレビ猫が我が家の庭に滞留する時間は短かった。食べ終わるとさっさとどこかに去っていったのである。その代わり、いろんな悪さをした。自分のオシッコをかけてマーキングしたり、庭に糞をしたり、である。この猫の糞は特に臭い。 さて、今年も秋が始まる頃から、テレビ猫の我が家での滞留時間は長くなっていった。食べ終わっても去ってゆかないのである。情も移って来たので無理には追い出さない。以前は庭猫たちとことを構えることも多かったが、次第に従順になっていったようにも見えた。明らかに、我が家の庭猫より低い順位で甘んじるようになったのである。庭猫の小白は時折、手（前脚）でテレビ猫を叩く。それでもテレビ猫は抵抗せずに庭猫の群れの中にいるようになった。 この猫はここにいたいのだろう、と思えた。 我が家の庭猫たちは猫ドアを通って家の中の一角に入ることができるようになっている。その猫ドアから、テレビ猫も時折入るようになってしまった。テレビ猫が健常な猫であればそれでもよいかも知れない。しかし長く野良だったこの猫は、伝染する悪い病気を持っているに決まっている。家の中に入り、テレビ猫が口をつけた食器を庭猫たちが使うのはまずい。そこで気の毒ではあっても、家の中に入るとテレビ猫のことは追い出していた。 追い出されたテレビ猫は、しかし猫ドアの前に、おとなしく、ずっとしゃがんでいるのである。それでも多くの場合問題はなかった。庭猫たちはテレビ猫のそばを通って猫ドアをくぐることは出来たからである。しかし庭猫の大白はテレビ猫を恐れ、遠ざかる。だからテレビ猫が猫ドアの前にいると家の中には入れない。 テレビ猫には温室に住まわせればよいと私は考えていた。そこでテレビ猫を捕まえて何度も何度も、温室につれて行き（持って行く、というべきか）、温室で餌をやろうとした。餌をもらう間はテレビ猫は温室にいるけれど、すぐに猫ドアの前に戻ってしまった。 秋も深まり寒くなった日、庭猫がいられる家の中を覗くと、テレビ猫がいた。庭猫用のダンボールの中にテレビ猫がしゃがんでいるのである。そこでまた、可愛そうでも追い出した。テレビ猫はそれでも遠ざからず、猫ドアの付近で横になっている。そして時折、猫ドアを通って家の中に入ってしまう。 テレビ猫の行動には他の面でも変化が出てきた。猫ドアからそれほど遠くない草の中に大便をするようになったことである。テレビ猫の糞は臭いが強いのですぐに分かる。 草むらをテレビ猫の糞を探すことがしばらく続いた。 テレビ猫は段々と年老いて来たのだろう、と思えた。だから寒くなって、家の中にも入りたがる。糞をしに遠くに行くのも次第に億劫になってきたのだろう、と思えた。 ある日の夜、庭猫が入れる家の中の部屋を眺めるとまたテレビ猫がいた。ダンボールの中で呑気な顔をして、平然としゃがんで逃げようともしない。 これでテレビ猫を追い出すのも、もう限界だと思えた。この猫を追い出してもまた家の中に入ろうとする。敷地に入れないようにするには、既に情も移っている。既に寒くなった外に追い出すのは忍びない。だからといって庭猫たちのいる場所にいるのを許せば、感染する恐れもある。そう思ってとさっに籠を用意し、テレビ猫を捕まえて籠の中に入れた。 （続く） |
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