左胸のトシちゃん　 (2007/02/17)

　年末にメス猫のトシちゃんを保護し、以後飼っている次第は以前に書いた。

　　　　　　拾い猫トシちゃん

　トシちゃんはその後も時折具合が悪くなり、入院させたこともある。風邪を引いて鼻水と目ヤニを出し、目ヤニで目がふさがってしまう状態に何度かなった。母の病状が悪くなったこの１月、トシちゃんへのケアをする時間がなくなったので１週間ほど動物病院に預けたりもした。その後も目ヤニで目がふさがることが起き、口から入れる薬の他、目薬をもらってきてつけることが続いている。
　保護したときのトシちゃんは本当に骨と皮だった。そのまま死体であっても不思議はなかった。食欲はあるので当時よりは肉がついてきたけれども、まだひどく軽い。血液検査でもすればまだ数字は相当悪いだろうけれど、トシちゃんには生きる意志がある。鼻水やよだれを垂らしながらも、それなりに食べている。
　私の部屋の中で飼うに当たり、猫白血病を持っているトシちゃんのことはケージの中に入れて外には出さない。他の猫に接触すれば感染するからである。トシちゃんの食器は小まめに消毒しているし、抱いてあげるとき、私は専用のズボンと上っ張りを着る。だから着替えが面倒だ。
　トシちゃんはケージの中で寝ているときの他は、私がいれば私を見ている。険しい顔をしながら私を見ている。ときに私を求めるように鳴きかける。
　あまり時間はとれないが、時折私はケージに近づき、ケージを開けてトシちゃんを少し外に出し、身体を拭いてあげる。トシちゃんはよだれまみれであるからいつもやや臭い。そうしてトシちゃんをケージから出すと、おとなしくしているのではなく、私を腕（前足）で手繰り寄せ、私にしがみついてくる。だから私は腕でトシちゃんをいつも抱くことになる。トシちゃんはしがみつくと、声も出さずに私の胸に顔を埋め、そのままじっとしている。トシちゃんの顔を見ると目に涙を浮かべているように錯覚する。
　何かよほど辛いことがあったときの子供のように、トシちゃんはいつまでも私にしがみついて動かない。
　ふと気が付くと、トシちゃんはいつも私の左胸に身体を押し付けている。私の側から見れば、私がトシちゃんを左側で抱きかかえていることになる。
　マリアでも何でも、母親が赤子を抱いている絵では、皆左胸で抱いていることを思い出した。

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